茨城の法律事務所

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お知らせ INFORMATION

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コロナによる結婚式場キャンセル料について

新型コロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言発令に
関連して発生する法的紛争解決のために、
役立つと思われる情報をご紹介します。

今回は、結婚式場のキャンセル料についてです。

1 契約書記載のキャンセル料請求

キャンセル料とは、
違約金すなわち損害賠償額の予定です。

結婚式場側は、公益社団法人日本ブライダル文化振興協会の
モデル約款を参考にキャンセル料の規定を設けていると
思われます。

同モデル約款では、キャンセル時期に応じた料金が設定されています。
一部を抜粋すると、

・59日目以降30日目まで お見積額(サービス料を除く)の40%+実費等
・29日目以降10日目まで お見積額(サービス料を除く)の45%+実費等
・当日 全額

となっており、開催日が近づくにつれ、高額となっています。

この結婚式場のキャンセル料条項については、
消費者契約法第9条1号が適用され、
平均的な損害額を超える部分については無効となります。

それでは、平均的な損害額はいくらとなるか。
裁判例(京都地方裁判所平成26年8月7日判決)に計算式が示されていますが、
その計算結果によれば、
上記モデル約款のキャンセル料は、
いずれの時期も平均的な損害額を超えておらず、
無効ではないとの結論となっています。

2 コロナの影響によるキャンセル

新型コロナウィルス感染拡大の影響が見通せず、
開催日が近づくにつれてキャンセル料が高額化することを危惧して、
早期にキャンセルした方も
多かったのではないでしょうか。
コロナの影響によるキャンセルであっても、
約款どおりのキャンセル料の請求があったときの対応が問題となります。

本年4月7日に発令された緊急事態宣言に基づき、
各都道府県が各施設に休業要請をしていますが、
東京都の休業要請対象を見ると、
結婚式場は対象外となっています。

すると、結婚式場での挙式は自粛しなくてもよいことになりますが、
実際には、出席者の健康への影響を考えたら、
利用者としては挙式を思いとどまることの方が多いでしょう。

結婚式場側としても、
利用者や従業員の健康面への影響や
クラスター発生時のダメージを考慮すると、
利用者側が開催を希望しても、
開催するとの判断はしないのではないかと思います。
すると、緊急事態宣言下等で、
利用者の責任なく挙式が社会通念上不可能となった時は、
キャンセル料は発生しないと考えられるでしょう。
なお、コロナによる式場側事情による中止が債務不履行となるかは、
別途検討する必要があります。

個々の事情により結論が変わるので、
一般化はできませんが、
式場側から約款どおりの請求を受けたときは、
新型コロナ感染拡大の影響下における
感染拡大防止措置を施した
(例:来場者間の距離を十分にとり、三密を避ける。)
安全な挙式の実現可能性やコロナ影響下のキャンセル料の妥当性も踏まえて、
交渉していく必要があるかと思います。

なお、キャンセル料は、
キャンセルの通知をしたときの時期区分によって決まるので、
挙式を予定日にしないことを決めたときは、
キャンセルの通知だけは早めに行う必要がありますが、
上記モデル約款によれば、
キャンセル料を通知と同時に支払わなければならないとは記載していないので、
請求を受けても急いで支払わず、
約款のキャンセル料の支払い期限及び遅延損害金の条項を確認した上で、
一度、法律相談を受けられた方が良いと思います。

3 延期をしたい場合

利用者側、式場側双方にとって、
延期が円満な解決方法だとは思いますが、
上記モデル約款には
延期の条項がなかったため、
同モデル約款を参考に作成された式場の約款にもないことが多いようです。
そこで、延期するとしても、
一旦キャンセルとしてキャンセル料を支払い、
それを延期した挙式費用に充当するという方法もとられているようです。

また、上記協会のウェブサイト(下記リンク参照)には、
本年4月~5月の新規成約者には、
新型コロナの未収束を理由とする日程変更は、
「実費のみ」「キャンセル料相当額を全て延期時に充当可能」
を対応の基本とするとの内容の、事業者への要請も行われており、
これも参考になるのではないかと思います。

https://www.bia.or.jp/bia_info/200416/

延期の方向で交渉する際の注意点は、
コロナの影響による結婚式場の民事再生申立て等や
資金繰りの悪化のニュースもあるので、
挙式予定の式場の運営者の財務状況を確認することです。